高齢者を狙う特殊詐欺への対策ガイド
特殊詐欺は、対面せずに電話や郵便、インターネットなどを通じて金銭をだまし取る犯罪です。
高齢者は、家族や友人との接触が少ない人が多く詐欺師にとって心理的に入り込みやすいと考えられていて、年金受給者や退職金を保有し、金融資産を所有している可能性が高いという理由で、特に標的にされやすいのが悲しい現実です。
またIT技術を利用した詐欺や、巧妙かつ変化する詐欺の手口に不慣れな方が多く、家族や社会への信頼感が強い高齢者ほど、詐欺師に騙されやすい心理的傾向があります。
この記事では、特殊詐欺の中でも特に「高齢者」を狙った詐欺の手口と、その対策についてお伝えしていきます。
オレオレ詐欺
オレオレ詐欺は、詐欺の中でも特に被害が多い手口で、主に高齢者が標的にされやすい詐欺です。
主に電話を通じて、親族や知人など被害者に近い人物を装って金銭をだまし取る手口です。「振り込め詐欺」の一種で、近年では手口が巧妙化し、詐欺グループが組織的に行うケースが増えています。
・オレオレ詐欺の手口
1.親族になりすます
犯人が「オレだよ」と電話をかけ、息子や孫など親族になりすまし、「携帯電話を失くした」「声が風邪で変わった」などの理由で声の違和感を正当化します。
近年では、警察官や弁護士を装って事件解決のためと称して金銭を要求したり、銀行職員や役所職員を装うって口座情報やキャッシュカードをだまし取るなど、手口も多様化しています。
2.緊急性を煽る
「会社の金を使い込んでしまった」「事故を起こしてしまった」など、急いでお金が必要だと被害者に伝えます。時間の余裕を与えず、即座に対応を求めることで冷静な判断を妨げます。
3.受け取り役を利用
最近では銀行振込ではなく、「直接取りに行く」という手口が増加。仲間の受け取り役が被害者の自宅や待ち合わせ場所に現れ、現金を受け取るように誘導します。
・過去の犯罪例
◯ 高齢者を狙った大規模詐欺事件(2020年)
数十人の詐欺グループが全国で活動。偽の息子を装い、「緊急でお金が必要」と高齢者から現金を受け取る手口で、被害総額は10億円以上に上りました。
◯ 警察官を装った詐欺(2018年)
犯人が警察官を装い、被害者に「あなたの口座が犯罪に使われている」と説明。口座情報を聞き出し、預金を全額引き出すといった事件が発生しました。
◯ 家族の入院を偽装したケース(2017年)
孫を名乗る人物が「交通事故に遭い、手術費が必要」と高齢女性に連絡。現金500万円を犯人グループの一員に手渡すといった事件が発生しました。
・オレオレ詐欺を防ぐための対策
1.家族間の連絡体制を整える
日頃から家族と緊急時の連絡方法や合言葉を決めておくようにしましょう。電話でのやり取りだけでなく、本人確認を徹底する習慣を付けておくようにします。
2.怪しい電話を疑う習慣
「オレだよ」など抽象的な名乗りをする電話には応じないようにしましょう。緊急性を煽られても、必ず一度電話を切り、冷静に考える習慣を付けておくようにします。
3.防犯機器の活用
録音機能付き電話を導入し、詐欺の証拠を残すようにしましょう。ナンバーディスプレイを利用して、不審な番号からの着信に注意します。
4.警察や自治体の情報を活用
地域の防犯情報をチェックし、詐欺の新しい手口を知っておくようにしましょう。警察が主催する防犯講座に参加することもおすすめします。
5.振込や現金手渡しを慎重に
銀行やATMでの振込依頼には十分注意しましょう。現金を直接渡すよう要求されても、まず家族に確認するようにしましょう。
・被害にあった場合の対応
万が一被害にあったばあいは、すぐに最寄りの警察署または110番に連絡し、受け渡しの場所や振込先講座などの情報を正確に伝えるようにします。
また、家族や周囲の知人にも共有し、さらなる被害を防ぐようにしましょう。
還付金詐欺
還付金詐欺は、「税金や医療費の還付金がある」と偽り、被害者を騙して金銭を搾取する手口の詐欺です。犯人は市区町村役場の職員や税務署職員、社会保険事務所の職員などを装い、還付金の振り込みを口実にして被害者をATMへ誘導し、金銭をだまし取ります。
特に高齢者が狙われるケースが多く、その被害はあとを絶ちません。
・還付金詐欺の手口
1.役所職員を装う電話や手紙
犯人が役所や税務署の職員を名乗り、「税金」「医療費」「年金」の還付金があると連絡します。「手続きが期限を過ぎると還付金が受け取れない」と緊急性を煽ります。
2.被害者をATMに誘導
「手続きを進めるため、近くのATMに行ってください」と指示。ATMの操作を指示し、実際には犯人の口座に振り込みを行わせます。
3.個人情報の取得
被害者にマイナンバーや口座番号、暗証番号を聞き出し、詐欺に利用します。
4.偽の通知書やメール
本物そっくりの役所通知書や公式メールを送りつけ、被害者を信用させます。メールに記載されたリンクをクリックすると、詐欺サイトに誘導される場合もあります。
・過去の犯罪例
◯ 高齢女性が被害(2021年)
東京都の高齢女性が「医療費の還付金がある」との電話を受け、ATMに誘導され、約50万円を振り込んでしまったという事件が発生しました。
◯ 偽の還付金メール(2019年)
全国で偽の還付金メールが大量送信され、リンク先で口座情報やカード情報を入力させる手口が発生。被害総額は数千万円に上りました。
◯ 年金還付を装った詐欺(2020年)
年金事務所を装った電話で「未払い分の年金を還付する」と説明。ATMでの手続きを指示し、被害者から100万円以上を詐取した事件が発生しました。
・オレオレ詐欺を防ぐための対策
1.役所からの電話やメールを疑う
役所や税務署が電話やメールでATM操作を指示することは絶対にありません。少しでも不審に思ったら、すぐに公式の問い合わせ窓口に確認しましょう。
2.ATM操作は自分だけで行う
他人の指示でATMを操作しないこと。「振り込み」「送金」「還付」といったキーワードが出た場合は特に注意しましょう。
3.個人情報を安易に教えない
電話でマイナンバーや口座情報、暗証番号を聞かれた場合は即座に断りましょう。
4.家族間での情報共有
特に高齢者に対して、還付金詐欺の手口を日頃から教え、注意を呼びかけましょう。家族間で詐欺の情報を共有し、連絡体制を整えておくことが大切です。
5.防犯機器の導入
録音機能付き電話やナンバーディスプレイを活用し、不審な電話に対応しないようにします。
・被害にあった場合の対応
もしも被害にあってしまったら、すぐに最寄りの警察署または「#9110(警察相談専用電話)」に連絡しましょう。被害の詳細(電話番号、振込先口座など)を正確に伝えて相談します。
振込に使用した口座はできる限り早く凍結し、詐欺に遭った事実を家族や地域社会に共有することで、さらなる被害を防ぎます。
金融商品詐欺(かたる詐欺)
金融商品詐欺は、株式、債券、投資信託、仮想通貨、不動産投資などの購入や取引を装い、被害者に虚偽の利益を約束して金銭を詐取する詐欺です。詐欺師は金融機関や投資会社を名乗り、信頼性を装って近づきます。
この詐欺は、高齢者や投資初心者をターゲットにすることが多く、近年その手口が多様化・巧妙化しています。
金融商品詐欺の手口
1.高額な利益を謳う
「この投資商品は必ず利益が出る」と、リスクを過小評価し、高額な利益を強調します。短期間での高収益を約束し、冷静な判断を妨げます。
2.偽の金融機関を装う
銀行、証券会社、保険会社の名前をかたって連絡し、正規の金融商品であるかのように装います。偽の名刺や公式風のウェブサイトを用意して信用を得ようとします。
3.詐欺的な仮想通貨案件
仮想通貨やデジタル資産を利用した新しい投資商品を提案。実際には存在しない通貨や技術を宣伝し、被害者を騙します。
4.高齢者を狙った電話や訪問
高齢者の自宅に直接訪問したり、電話で執拗に勧誘します。「今だけのチャンス」として即決を迫ります。
5.ポンジ・スキーム(出資金詐欺)
新しい出資者から集めたお金を古い出資者への配当金として回す手法で、「安定した配当金」を約束する話をするものの、最終的には資金が破綻します。
・金融商品詐欺の犯罪例
◯ 架空の海外投資案件(2020年)
投資会社を装った詐欺グループが「海外の不動産ファンド」を販売。「年間10%以上の利益が確実」と勧誘し、被害総額は約50億円にのぼりました。
◯ 仮想通貨詐欺(2019年)
「次世代の仮想通貨」として存在しないデジタル通貨を販売。被害者から数百万円単位の購入金をだまし取り、詐欺グループは消失しました。
◯ 高齢者を狙った投資詐欺(2021年)
高齢女性に「信頼できる証券会社」として電話で勧誘。存在しない債券を販売し、総額1,000万円以上の被害に。
・金融商品詐欺を防ぐための対策
1.信用できる金融機関を選ぶ
提案された会社や商品の正当性を公式サイトや金融庁の登録業者リストで確認。連絡先が正規の会社と一致しているか確認するようにしましょう。
2.即決を避ける
「今だけのチャンス」「早い者勝ち」といった話には注意。一度話を持ち帰り、家族や専門家に相談するようにしましょう。
3.公的機関に相談する
不審な投資話があれば、金融庁や警察、消費生活センターに相談しましょう。地域の弁護士会や証券業協会も相談窓口を設けています。
4.詐欺の兆候を見極める
高すぎる利回りを謳っていたり、商品内容が不明確、もしくは詳細を説明しない勧誘、強引な態度や高圧的な言動が見られる勧誘は、詐欺である可能性が高いといえます。
・被害にあった場合の対応
もしも被害にあってしまったら、すぐに最寄りの警察署または「#9110(警察相談専用電話)」に連絡しましょう。被害の詳細(電話番号、振込先口座など)を正確に伝えて相談します。
振込に使用した口座はできる限り早く凍結し、弁護士や専門家にも相談してみましょう。